スタジオは、今では、画家や写真家の仕事場、音楽や放送の収録室、映画やテレビの撮影のための部屋や建物などを指す言葉です。ふだんは一つの意味に見えますが、もともとは「学ぶこと」と深く結びついた外来語でした。
日本語のスタジオは、英語 studio を写した言い方です。ただし、その英語は、さらにイタリア語 studio をへて、ラテン語 studium にさかのぼります。
ラテン語の studium は、学問そのものだけでなく、熱心に打ちこむ気持ちや研究を意味しました。そこから、「勉強する場所」「仕事に打ちこむ部屋」という意味が育ち、芸術家の仕事場を表す言葉になっていきました。
つまり、スタジオのいちばん古い土台には、ただの部屋ではなく、「心をこめて学ぶこと」「熱意をもって取り組むこと」があります。今の日本語で、ものを作る場や表現の場をスタジオと呼ぶのは、その流れをよく残していると言えます。
日本語で早くから見つかる形は、今の「スタジオ」だけではありません。1925年(大正14年・大正時代後期)の久米正雄『放送雑感』には「スタヂオ」が見え、放送や録音にかかわる部屋の意味で使われています。
つづいて、1927年(昭和2年・昭和時代前期)の芥川龍之介『河童』には「ステュディオ」という形が見えます。ここでは、写真師の仕事場という意味で書かれており、英語の音をまだ日本語へうつしかえる途中だったことがよく分かります。
この二つの例をくらべると、日本語に入った初めのころから、スタジオは一つの場だけを指していたのではないことが分かります。芸術家の工房としての意味と、放送・録音のための部屋としての意味とが、ほぼ同じ時期に日本語の中で使われ始めていました。
さらに、1928年(昭和3年・昭和時代前期)の『音引正解近代新用語辞典』には、映画撮影ができるように設備された部屋、またその建物という意味が載っています。ここまで来ると、今の「撮影所」の意味も、すでにかなりはっきりしていたことになります。
表記のうえでも、この言葉は少しずつ落ち着いていきました。はじめは「スタヂオ」「ステュディオ」のように、もとの発音をどう日本語で表すかがまだ定まりきっていませんでしたが、のちに「スタジオ」が広く通る形になりました。
意味の広がり方も、語源とよく合っています。もともと「熱心に学ぶこと」から出た言葉が、まずは芸術家の仕事場を指し、そこから放送、録音、映画、テレビの制作の場へと広がりました。つまり、スタジオは「表現を作る場所」という意味をだんだん大きくしてきた言葉なのです。
このため、アトリエや工房に近い意味で使われることもあれば、放送局や映画会社に関係することばとして使われることもあります。見た目は同じ一語でも、その中には「学ぶ場」「作る場」「撮る場」「録る場」といういくつもの重なりがあります。
スタジオの由来をまとめると、英語 studio から入った外来語で、そのさらに奥にはイタリア語 studio、ラテン語 studium がありました。学ぶことや熱意を表した古い言葉が、芸術家の仕事場を経て、現代では録音室や撮影所までふくむ広い意味の言葉になったのです。
主な参考文献
・『精選版 日本国語大辞典』
・『日本大百科全書』
・Merriam-Webster Dictionary
・久米正雄『放送雑感』
・芥川龍之介『河童』
・『音引正解近代新用語辞典』















































































































