グレる・ぐれるの語源・由来

グレる、またはぐれるは、今では、生活のしかたや行いが正しい道からそれて、不良っぽくなることを表す言葉です。けれども、この言葉は、初めから「不良になる」という意味だけで使われていたわけではありません。

もとの形は、動詞の「ぐれる」より先にあった名詞の「ぐれ」です。そしてその「ぐれ」は、さらにさかのぼると「ぐれはま」、その前の形である「ぐりはま」につながります。

「ぐりはま」は、「はまぐり」の「はま」と「ぐり」を入れかえた言い方です。こうしてできた言葉が、物事の手順や結果が食い違うこと、話がかみ合わないことを表すようになりました。

この意味になったわけは、蛤の殻はもとの組どうしなら合うのに、逆にしたり、別の殻と合わせたりすると合わないことからだと考えられてきました。つまり、ぴたりと合うはずのものがずれてしまう感じが、言葉の中身になっていたのです。

古い例としては、1563年(永禄6年・戦国時代)の『玉塵抄(ぎょくじんしょう)』に「はまぐりぐりはま」が見えます。さらに1679年(延宝7年・江戸時代前期)の俳諧書『破邪顕正(はじゃけんしょう)』には、物事が食い違う意味の「ぐりはま」がはっきり残っています。

その後、「ぐりはま」は音が変わって「ぐれはま」にもなりました。1786年(天明6年・江戸時代中期)の滑稽本『指面草(さしもぐさ)』には、この「ぐれはま」の形が見えており、言葉の音が少しずつ変わっていったことが分かります。

さらに「ぐれはま」は縮まって「ぐれ」になりました。雑俳『伊勢冠付(いせかむりづけ)』には、まともな道からそれることを表す「ぐれ」が見え、1817年(文化14年・江戸時代後期)の歌舞伎『桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)』では、盗みなどの悪事をはたらく意味でも使われています。

ここで大切なのは、「ぐれ」の古い意味が、ただの悪口ではなく、「食い違う」「道からそれる」という広い感じを持っていたことです。そこから、人の行いについても、まっすぐな道を外れるという意味が強くなっていきました。

動詞の「ぐれる」は、その「ぐれ」に「る」がついてできた形です。今の意味にかなり近い古い例は、1813年〜1823年(文化10年〜文政6年・江戸時代後期)の滑稽本『浮世床(うきよどこ)』に見え、「どうして又ぐれさしったか」とあって、すでに身持ちがくずれる意味で使われています。

ただし、「ぐれる」は同じころ、「見込みが外れる」「話が食い違う」という意味でも使われていました。1831年(天保2年・江戸時代後期)の『氷縁奇遇都の花(ひょうえんきぐうみやこのはな)』にはその例があり、今の「不良になる」という意味だけが先にあったのではないことが分かります。

このあと「ぐれる」は、道を踏み外す意味がいっそう強まり、明治・大正・昭和へ進むにつれて、若者の非行を表す言葉として広く知られるようになりました。そこから生まれた「愚連隊」も、「ぐれる」からできた呼び名で、「愚連」はあとから当てた字です。

こうして見ると、グレる・ぐれるの由来は、蛤から作られたことば遊びのような「ぐりはま」に始まり、「食い違う」「合わない」「道からそれる」という意味をたどって、今の「不良になる」へ進んだことになります。今のくだけた響きからは想像しにくいのですが、もとは、合うはずのものが合わなくなる感覚をていねいに言い表した、かなり古い日本語なのです。

主な参考文献
・『精選版 日本国語大辞典』
・『デジタル大辞泉』
・『玉塵抄』
・俳諧『破邪顕正』
・滑稽本『指面草』
・雑俳『伊勢冠付』
・歌舞伎『桜姫東文章』
・滑稽本『浮世床』
・人情本『氷縁奇遇都の花』

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