スケールの語源・由来

スケールは、今では、目盛りのついた測定器具や尺度のことにも、物事の規模のことにも、音階のことにも使われる言葉です。日常では「スケールの大きい話」「キッチンスケール」「ハ長調のスケール」のように、かなり広い意味で親しまれています。

この言葉は、日本で生まれたものではなく、英語の scale を写した外来語です。ただし、ここで少し気をつけたいのは、英語の scale そのものが、もともと一つの筋だけで育った語ではないということです。

日本語でかなり早い例として知られるのは、1872年(明治5年・明治時代前期)の中村正直訳『自由之理』です。そこには「秤盤(スケール)」とあり、まずは天秤の皿、あるいは量る道具に近い意味で受け入れられていたことが分かります。

その後、1910年(明治43年・明治時代後期)の『洋楽手引』には、音階の意味のスケールが見えます。さらに1918年(大正7年・大正時代前期)の久米正雄『学生時代』には、人物や動きの大きさを表す「スケール」が現れ、今につながる「規模」の意味も広がっていきました。

こうして見ると、日本語のスケールは、明治から大正にかけて、量る道具、音の並び、物事の大きさという意味を順に広げながら、使い道の多い言葉になっていったことが分かります。はじめから今の意味が全部そろっていたのではなく、西洋の学問や音楽、日常生活の道具といっしょに、少しずつ日本語の中へ入ってきたのです。

では、英語の scale のもとには何があるのでしょうか。目盛り、尺度、規模、音階といった意味につながる流れは、ラテン語の scala にさかのぼります。scala は「はしご」を意味する言葉です。

「はしご」と聞くと、今のスケールとは遠いように思えますが、つながりは意外にはっきりしています。はしごは段が一つずつ並んだものですから、そこから「段階」「順に並んだ目盛り」「程度のちがい」という考えが生まれ、さらに尺度や規模、音の階段のような音階も表すようになりました。

音階をスケールと呼ぶのも、この「段を上るように音が並ぶ」という感じを思えばよく分かります。また、地図や図面の縮尺、あるいは物事の大きさをいうスケールも、何かを一定の段どりや比べ方の上に置いて考えるところから来ています。

けれども、天秤の皿やはかりの意味に近い scale は、これとは別の流れを持っています。こちらは古ノルド語の skál にさかのぼり、もともとは「皿」「ボウル」「杯」のような入れ物を表しました。

つまり、英語では、同じ scale というつづりの中に、「はしご」に由来する流れと、「皿・ボウル」に由来する流れとが重なっているのです。日本語のスケールも、それをまとめて受け入れたため、目盛りや規模をいう言葉と、はかりを思わせる言葉とが、一つの形の中に同居することになりました。

このことは、日本語の最初期の例が「秤盤(スケール)」になっていることともよく合います。まず量る道具の名として入り、その後に、段階・尺度・音階・規模という、より広い意味がなじんでいったと考えると、語の広がり方が自然に見えてきます。

表記がカタカナなのも、この言葉が外から入ったことをよく示しています。漢字を当てず「スケール」と書くことで、道具の名にも、音楽の用語にも、比ゆ的な「規模」の意味にも、同じ形で使いやすくなりました。

スケールの由来をまとめると、日本語では英語 scale を受け入れた外来語ですが、その英語の中には二つの古い流れがあります。目盛り・尺度・規模・音階につながる流れはラテン語の「はしご」から、はかりの皿につながる流れは古ノルド語の「皿・ボウル」から来ており、日本語のスケールは、その重なりを一つの言葉として生きている表現なのです。

主な参考文献
・『精選版 日本国語大辞典』
・『デジタル大辞泉』
・中村正直訳『自由之理』
・『洋楽手引』
・久米正雄『学生時代』
・Oxford Advanced Learner’s Dictionary

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