ハイボールの語源・由来

ハイボールは、今では、ウイスキーを炭酸水で割って氷を入れた飲み物として広く知られています。居酒屋や家庭でも親しまれているので、昔から日本にあった飲み方のように感じられますが、言葉そのものは外から入ってきたものです。

この言葉は、英語の highball から来ています。日本語ではウイスキーの炭酸割りを指すことが多いのですが、英語では、もともとウイスキーに限らず、蒸留酒などを水や炭酸飲料で割った背の高い飲み物を広く指しました。

日本語での早い例としてよく知られるのは、1914年(大正3年・大正時代前期)の原田棟一郎『紐育(ニューヨーク)』です。そこには、ソーダの氷水で割って「ハイ・ボール」にして飲むという書き方があり、このころにはすでにアメリカの飲み方の名として日本に伝わっていたことが分かります。

この言葉の由来として、日本語では、背の高いグラスに入れて飲むところから生まれたと説明されることが多いです。たしかに、今でもハイボールは縦にすっと長いグラスに入るイメージが強く、名前の感じにもよく合っています。

ただし、英語側の語源は、ぴたりと一つに決めきれるほど単純ではありません。英語の辞書や語源の説明を見ると、背の高いグラスと結びつける考え方のほかに、十九世紀ごろのアメリカで使われた別の highball という言い方との関係を思わせる説明もあり、細かな名づけの事情にははっきりしないところが残っています。

それでも、日本語のハイボールを理解するうえで大切なのは、まずこの飲み物が、西洋風の酒の飲み方といっしょに入ってきた外来語だということです。しかも、入ってきた当初から、ただウイスキーをそのまま飲むのではなく、水や炭酸で割って軽く楽しむ洋風の習慣を背負った言葉でした。

もとの英語では、ハイボールは一つの決まった酒だけを指すのではなく、酒に割りものを合わせた、比較的さっぱりした長い飲み物全体を指しました。けれども日本では、その中でもとくにウイスキーの炭酸割りが強く結びつき、しだいに「ハイボールといえばウイスキーとソーダ」という受け取り方が定着していきました。

この意味のしぼられ方は、日本語の外来語ではめずらしくありません。広い意味で入ってきた言葉が、日本の生活の中でいちばんよく使われる形に引き寄せられ、少し狭い意味で落ち着くことがあります。ハイボールも、その分かりやすい例の一つです。

また、この言葉は、のちの酒の呼び名にも影響を与えました。たとえば「酎ハイ」の「ハイ」は、ハイボールの「ハイ」とつながるものとして理解されることが多く、炭酸などで割って軽く飲む酒の言い方の土台になりました。つまり、ハイボールは一つの飲み物の名にとどまらず、日本の酒のことばづかいにも跡を残したのです。

表記としては、今ではカタカナの「ハイボール」がふつうです。昔の本では「ハイ・ボール」と中黒を入れる形も見えますが、これは外来語がまだ新しく、英語の形を意識して書かれていたためです。日本語の中でなじむにつれて、今の続け書きの形が広まりました。

ハイボールの由来をまとめると、英語 highball から入った外来語で、日本語では大正時代にはすでに使われていました。名づけの細かな事情にははっきりしない点もありますが、背の高いグラスで飲む洋酒の割りもの、という感覚がこの言葉の中心にあります。そして日本では、その意味がしだいにウイスキーの炭酸割りへと集まり、今の親しみ深いハイボールになったのです。

主な参考文献
・『精選版 日本国語大辞典』
・『日本大百科全書』
・Merriam-Webster Dictionary
・Oxford Advanced Learner’s Dictionary
・原田棟一郎『紐育』

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