メロメロの語源・由来

メロメロは、今では、だれかに強くひかれて自制がきかなくなることや、かわいさにすっかり気持ちがゆるんでしまうことを表す言葉です。恋人や子ども、孫、推している人などに夢中になる場面でよく使われます。

けれども、この言葉は新しい流行語ではありません。古くから日本語の中にある擬態語で、今の意味だけでなく、もっとちがう使い方もしていました。

いちばん古い例としてよく知られるのは、1275年(建治元年・鎌倉時代中期)ごろに成った『名語記(みょうごき)』です。そこには「ぬり物などのめろめろとはぐる」とあり、塗り物がたやすくはがれるさまを表していました。

この古い用例から分かるのは、もとのメロメロが、何かの張りが弱くなって、するりと取れたり、保てなくなったりする感じを持っていたことです。今の「しまりがなくなる」という意味にも、どこか通じるところがあります。

その後、1706年(宝永3年・江戸時代中期)の浮世草子『風流曲三味線(ふうりゅうくせじゃみせん)』には、「めろめろ泣く所ではない」と見えます。ここでは、いくじなく泣くさま、今の言い方なら「めそめそ泣く」に近い意味で使われています。

さらに、1748年(寛延元年・江戸時代中期)初演の浄瑠璃『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』にも、「めろめろと吠え面」とあるので、弱々しく泣いたり、情けなく取り乱したりする感じが、江戸時代にはよく通じる言い方だったことが分かります。

また、1806年から1811年(文化3年〜文化8年・江戸時代後期)ごろの『文化句帖』補遺には、「伽藍もめろめろと燃へて」とあります。ここでは、炎を上げて燃えるさまを表しており、今の「めらめら」に近い働きをしています。

このように、古いメロメロには、はがれる、泣く、燃えるという、一見すると離れて見える意味がありました。けれども、どれも、形や落ち着きが保てず、くずれるように進んでいく感じを持っている点では、たしかに重なっています。

今の「人に夢中になってメロメロになる」という使い方は、そうした古い意味の上に育ったものです。心の張りがゆるみ、理性や我慢がきかなくなるさまを、人の気持ちにたとえて言うようになったと考えると、今の意味へのつながりがよく分かります。

辞書では、今のメロメロを「しまりがなくなるさま」「自制力・抵抗力などを失うさま」と説明しています。ですから、ただ「大好き」というだけでなく、好きすぎて力が抜け、相手にすっかりかなわなくなっている感じまでをふくむ言葉なのです。

表記について言えば、古い作品では「めろめろ」とひらがなで書かれるのがふつうでした。今よく見る「メロメロ」は、外来語だからではなく、擬態語を見やすく目立たせるためにカタカナで書く、現代の書き方に合った形と考えてよいでしょう。

つまり、メロメロの由来は、だれかに恋して生まれた言葉でも、外国語から入った言葉でもありません。鎌倉時代から続く日本語の擬態語が、はがれる、泣く、燃えるといった意味をへながら、最後に「すっかり気持ちを奪われて、しまりがなくなる」という今の意味へと育ってきた言葉なのです。

主な参考文献
・『精選版 日本国語大辞典』
・『デジタル大辞泉』
・『名語記』
・『風流曲三味線』
・『仮名手本忠臣蔵』
・『文化句帖』補遺

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