「とつおいつ」は、あれこれ思い迷って、考えがなかなか決まらない様子を表す言葉です。今ではやや古風な響きがありますが、心が定まらず、どうしようかと行きつ戻りつする感じを、よく表しています。
この言葉のもとになったのは、「取りつ置きつ」という言い方です。文字どおりにいえば、物を手に取ったり、また置いたりすることです。
手に取っては置き、置いてはまた取るという動作には、ひとつに決めきれずためらう感じがあります。そこから、実際の手の動きだけでなく、心の中で迷うありさまにも使われるようになりました。
つまり、「とつおいつ」の語源は、外来語でも漢語でもなく、日本語の古い言い回しが音の上で縮まり、変わってできたものです。意味も、元の動作のイメージをたどると、とても分かりやすくつながります。
古い形としては「とっつおいつ」もあり、16世紀の資料である『玉塵抄(ぎょくじんしょう)』には、「思案念慮してとっつをいつ案ずれば」という例が残っています。ここでは、あれこれ思いめぐらして考える様子が、すでに今に近い意味で使われています。
この古い例が大切なのは、「とつおいつ」がかなり早い時期から、心の迷いを表す言葉として使われていたことを示しているからです。もともとの「取りつ置きつ」という動作の意味が、ただの物の扱いではなく、気持ちの揺れへと移っていたことが分かります。
音の形にも変化があります。「取りつ置きつ」がそのまま長く言われるうちに、言いやすい形へ縮まり、「とっつおいつ」、さらに「とつおいつ」となったと考えられます。こうした音の変化は、日本語ではめずらしいことではありません。
表記は、ふつうはひらがなで書かれますが、語源を意識して「取つ置いつ」と書かれることもあります。この書き方を見れば、もとの意味が「取る」と「置く」のくり返しであることが、いっそうはっきりします。
この言葉のおもしろいところは、目に見える動きが、そのまま心の動きのたとえになっている点です。手が落ち着かず、取ったり置いたりする姿が、心の中で決めかねている様子に重なり、それが一つのまとまった表現になりました。
ですから、「とつおいつ」の由来を短く言うなら、「取りつ置きつ」が音変化した語で、手に取ったり置いたりしてためらう動作から、思い迷って心が定まらない意味へ広がった言葉、ということになります。古い日本語らしい形の変化と、意味の移り変わりが、きれいに残っている言葉です。
主な参考文献
・『デジタル大辞泉』
・『精選版 日本国語大辞典』
・『玉塵抄』
・『ルーツでなるほど慣用句辞典』
















































































































