がらす【硝子】の語源・由来

硝子(がらす)は、今では窓や器などの材料を指す、ごく身近な言葉です。けれども、もともと日本で生まれた呼び名ではなく、外国語が日本語の形に変わって広まったものです。

もとの言葉は、オランダ語の glas です。江戸時代、日本が西洋と深くつながっていた入口の一つがオランダだったため、この呼び名が日本にも入りました。

オランダ語の glas は、日本語の音にそのままでは乗せにくいため、間に母音が入って「がらす」という形になりました。今の私たちには当たり前に聞こえる形ですが、日本語らしい言い方に直しながら受け入れた結果だと分かります。

ただし、日本では最初から「がらす」だけが使われていたわけではありません。古くは、仏教の言葉を通って入った「玻璃(はり)」という呼び名もあり、これはもともと水晶を指す言葉でした。

南蛮貿易のころには、ポルトガル語 vidro から来た「びいどろ」も広く知られました。1603年(慶長8年・江戸時代初期)の『言経卿記(ときつねきょうき)』には、すでに「ビイドロ」の例が残っていて、この時代にはこちらの名のほうが先に親しまれていたことが分かります。

さらに江戸時代には、「ぎやまん」という言い方も使われました。これはオランダ語 diamant から来た言葉で、はじめはダイヤモンドを指し、のちには細工の美しいガラス製品にも広がっていきました。

一方、漢字の「硝子」は、今ではふつう「がらす」と読まれますが、もともとは別の道筋を持っています。中国の『本草綱目(ほんぞうこうもく)』に「硝子」が見え、日本でも1666年(寛文6年・江戸時代前期)の『訓蒙図彙(きんもうずい)』に「しょうし」と読む形が残っています。

ここで大切なのは、漢字の「硝子」と、外来語の「がらす」とが、最初からひとつの形で生まれたわけではないという点です。江戸時代には「硝子」という表記がまず「びいどろ」に当てられ、その後になって「がらす」と読む書き方が広まりました。

「がらす」という読みそのものの古い例としては、1763年(宝暦13年・江戸時代中期)の『物類品隲(ぶつるいひんしつ)』がよく知られます。そこでは、硬くてもろく透明な品として説明されるとともに、「玻璃」「ビードロ」「ギヤマン」と並べて書かれており、呼び名が入れ替わっていく途中の様子がよく伝わります。

その後は「がらす」がしだいにふつうの言い方になり、「びいどろ」や「ぎやまん」は古風な名や品物の名として残るようになりました。明治時代になると、「窓硝子」「硝子越し」など、暮らしの中の言葉としても自然に使われるようになっています。

こうして見ると、硝子という言葉の面白さは、音と字が別々の道を歩いてきたところにあります。呼び名はオランダ語 glas から来た「がらす」、字はそれより古くからあった「硝子」が結びつき、今の「硝子(がらす)」という形ができあがったのです。

主な参考文献
・『精選版 日本国語大辞典』
・『本草綱目』
・『訓蒙図彙』
・『物類品隲』
・『言経卿記』
・『増補華夷通商考』
・大江三郎「日本語中の外来語における母音呼応」

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